あらばるの矯正日記

歯列矯正のこととか

口だけ孫悟空

そこに行けば どんな夢も

叶うって本当ですか?(クリニック初診時の何も知らない私)ガンダーラ…ではなく、矯正歯科に行けば「綺麗な歯並びになりたい」という夢は叶うかもしれない。しかしそれには、相応の代償が必要である。三蔵法師一行だって、天竺を目指すために数多の困難をくぐり抜けてきた。『正しい噛み合わせ』というユートピアへの道のりは、まだまだ遠く険しい。今回は、矯正に伴う『痛み』の話である。

※これはサムネ用のお花。春ですね。

 
上の歯、動きます。

上顎小臼歯2本の抜歯はドライソケット等の大きな問題もなく、抜歯痕の経過も比較的順調だった。しかしそんな安心も束の間、抜き終わったからにはワイヤーを通さなければ歯列矯正は始まらない。上顎にのみ先にブラケットを装置、ワイヤーを通して「矯正、始めました」という感じの口元になった。記録のために泣く泣く装着時の写真を貼るが、見たくない人は飛ばして欲しい。

それにしても肌荒れがひどい。歯よりもそっちが気になるな…。

ブラケットとワイヤーはそれぞれ、矯正効果・見た目・金額によっていくつかの選択肢がある。クリニックではサラッとカウンセリングされただけだったが、最初のこの選択はかなり重要だと思う。

 

▫️ブラケット

一般には聞き慣れない言葉だが、歯の表面についている四角い金具のことである。いわゆるザ・矯正という感じの銀製は比較的安価で矯正効果も高く、メンテナンスも楽だがとにかく目立つ。セラミック製は銀製よりも価格や効果の面で劣るが、透明で歯に馴染み目立たない。

私はクリニックの提案により、外から見えやすい前の方の歯はセラミック製で奥の方は銀製と、場所によって2種類を使い分けた。写真を見ていただくと、奥の方が銀製なのが分かると思う。双方の良いとこ取りだし、この方法を選択する人が多いだろう。全部銀にすれば、ジョ◯ョ7部のジャイロみたいになる。ニョホ。

▫️ワイヤー

矯正の要であり、原動力でもあるワイヤー。歯につけたブラケットにワイヤーを通す形で装着していく。最初は一番細く柔らかいものから、最終的に太く矯正力の強いものに付け替えていくとのこと。こちらも銀製と銀製を白く塗装したものの2種類があり、銀製に比べてホワイトワイヤーの方が目立たないが矯正期間が長く、維持管理にも手間がかかる。

早く矯正を終わらせたかったので、私は銀製のワイヤーを選択した。写真撮影などで口元をどうしても目立たせたくない時だけ、ホワイトワイヤーに変更することも可能らしい。また、私の行っている所には無いようだが、世の中にはゴールドワイヤーなるものもある。金色の方が色馴染みが良いとのことなので、是非クリニックでも採用してほしいものだ。

 

口内大戦争

歯並びがあまりにも前後にガタガタのため、まずは一部の歯のみブラケットを装着し動かすことから始まった。最初の3日間ほどはとにかく歯を動かす痛みが辛く、何かを歯で噛むなんてもってのほか、ヨーグルトを食べている時にスプーンが歯に当たるだけでンヒィ!となる数日間を過ごしていた。勘弁してほしい。

その後、口元の締め付けに慣れてきたあたりで今度は口の中が口内炎だらけになってきた。ブラケットやワイヤーの食い込み、栄養バランスの崩れ、ストレス、理由をあげればキリがない。ドラッグストアで急いでオルテクサー(口内炎用のなんかザラザラした塗り薬)を買い、口内のあらゆるところに塗り込んでひとまず様子を見ることにした。

 

口だけ孫悟空

かくして私は、頭ではなく口元に禁箍児(きんこじ)を嵌めることとなった。禁箍児とは孫悟空が頭につけている、あの金の輪っかのこと。悪いことをすると罰として締め上げられる。私は何も悪いことしてないのに…歯並びが『悪い』のだから仕方ないのかも。『口だけ孫悟空』である。

本稿を執筆している日も朝から天気が悪く、低気圧かつ満員電車のせいで歯が痛い。『口だけ孫悟空』の代わりに、筋斗雲くらい呼ばせてほしいものだ。

悲しいかな、食への執着

上から読んでも下から読んでも

ちもち。正しくは血餅(けっぺい)。それはあまりにも脆く、儚く、抜歯後の私が命懸けで守護(まも)らなければならない存在である。食への執着に負けて乱暴な飲食を繰り返したり、あるいは単に運が悪かったりして守護りきれなかった場合、抜歯後の数週間で待ち受けるのは地獄の痛みだ。

 

ドライソケットの悪魔

抜歯後しばらくの間、抜歯跡に血餅と呼ばれる血の塊が穴に蓋をする。これが非常に脆く、形成途中で血を吸う、食事の時に舌でさらう、歯磨き等してしまうとすぐに剥がれてしまう。血餅が自然と無くなるまで守りきれずに途中で剥がれてしまった場合、抜歯跡の骨がむき出しの『ドライソケット』と呼ばれる状態がやってくる。これが本当に恐ろしい。

こうなると、息を吸うだけで骨に直接空気が触れるので死ぬほど痛い。飲食なんてもってのほかで、痛み止めを飲んでも夜眠れないくらいの痛みがしばらく続くらしい。SNSで『ドライソケット』と調べると、数多の人の恐怖や痛みが感じられる。チェン◯ーマンの世界には絶対『ドライソケットの悪魔』がいると思う。全ての感覚に敏感になり、痛みを感じさせる悪魔。そのくらい恐ろしいのだ。

 

ドライソケットからの逃亡

抜歯から自然に抜歯跡が治ってくる約1週間の間、とにかく血餅を保全すること。これが我々にできる唯一の防衛である。先生からは麻酔が切れるまでは飲食しない方が良いですね〜とだけ言われ、注意どころかドライソケットのドの字も無かった。そしてそれを間に受けたノーテンキな私は、1本目の抜歯3時間後に早速細かく切った焼きそばを食べた。これが直接関係しているかは分からないが、1本目の抜歯跡の治りは悪く、かろうじてドライソケットにはならなかったものの恐怖の日々を過ごす羽目になった。

正直、血餅を守るには飲食をしないことが一番である。2本目以降は抜歯して12時間は飲食を我慢するようにしている。しかし点滴でも連れ歩かない限り、それ以降は口から食べ物を摂り入れるしかない。でもまだ傷が痛い。じゃあ何を食べるか。現在に至るまで、試行錯誤の日々が続いている。以下に、いくつか試した中で比較的食べやすいものを紹介する。

 

最近食べているものたち

▫️豆腐

マジで感謝〜、ソイ!飲むように食べられるので、ついシャンランランラしてしまうくらいに日頃お世話になっている。特に相模屋食品の『おだしやっこ』シリーズ。1食200円で300gの豆腐が難なく食べられて、たんぱく質も16gと申し分なし。近所のスーパーで安いところを見つけたので、最近の職場ランチはもっぱらこれを主食にしている。

▫️野菜ジュースやプロテイン

歯列矯正を初めてからというものの、歯や器具に挟まるやら噛みきれないやらでとにかく緑黄色系の葉物の野菜が食べられなくなった。しかしどうにかビタミンは摂りたい。ということで半ば気休めであるが、朝はプロテインを、昼は野菜ジュースを飲んでいる。トレーニングしている訳でも無いし正直意味があるのかは分からないが、飲まないよりはマシだと思っている。

▫️柔らかいパンまたはお粥

フレンチトーストや蒸しパンのような柔らかめのパンであれば、どうにか食べられることがわかってきた。今まではご飯派だったのだが米粒は挟まったり穴に入ったりするので、最近はパン食が多い。お粥レベルに細かくすればお米も食べられるので、家での食事など時間がある時はお粥に山海ぶし(練り梅おかかを和えたペースト)を入れたりしている。

▫️ヨーグルト

最初の頃はたんぱく質摂取のためにオイコスを食べていた。しかし、あのもっちりした感じが血餅もくっつけてそのまま攫っていってしまいそうだったので、最近は普通のさっぱりしたヨーグルト(Bifixが好き)にバナナを入れて食べたりしている。

▫️サプリ

正直、サプリだけで必要な栄養素全てとれないかな、というのが一番の感想である。野菜不足を補うためのマルチビタミン&ミネラル、あと傷の治りや口内環境の維持のためのビタミンB2B6を飲んでいるが、これも野菜ジュースと一緒で効果があるのかはよく分からない。

▫️スイーツ系インスタントラテ

甘いものが食べたい!しかしクッキーなどは御法度。とりあえず液体で甘味が取れるように、ネスカフェの『ふわラテ』シリーズを買い込んだ。それでも足りなかったり、歯の調子が良い時はお饅頭系なら食べられることがわかった。もみじ饅頭が柔らかくて美味しい。

 

悲しいかな、食への執着

今回の記事の長さからも、いかに私が食べることが好きか、そしてどんなに歯が痛くても『何なら食べられるか』に執着していることがお分かりいただけたかと思う。本当は『食べない』ことが一番効果的なのも分かっている。矯正ついでにダイエットできれば一石二鳥だが、食事をストレス解消やコミュニケーションツールにしているタイプの人間(つまり私)には、まだまだ辛い日々が続くだろう。

新たな仲間たち

矯正だョ!

全員集合〜!という訳で(?)今日はこれまでの振り返りを少しお休みし、歯列矯正を始めるにあたって揃えた口内環境維持フレンズを紹介する。要はMy new gear…である。(紹介順は写真左から、カッコ内は入手場所)

歯ブラシ

・tuft 12(矯正歯科)

今までも一般歯科から同じメーカーの歯ブラシをもらって愛用していたが、矯正歯科ではさらに一回りヘッドが小さく毛束も2列のみのタイプを渡された。狭いところまで届きやすいのはもちろん、毛も丈夫で長持ちだが、歯科専用のため入手しづらいのが玉に瑕。大事に使おう。

・GVK Spot(矯正歯科)

矯正器具の隙間や歯並びの隙間を磨くために新しく追加された、毛束が1束だけの歯ブラシ。歯並びのせいで普通の歯ブラシでは磨きづらい私にうってつけ。どうしてもっと早く使わなかったんだろうと後悔さえしている。毛先が少し鋭利なので、デリケートな場所を磨く時は慎重に。残念ながら血を見ることになる。

 

歯磨きジェル

・コンクール ジェルコートF(ドラッグストア)

Twitterで『矯正 歯磨き粉』と検索したところ体感で使っている人が一番多そうだったので、ドラストを探し回った。研磨剤フリーの歯磨きジェルで矯正器具を傷つけないのも好ましい。普通の歯磨き粉のようには一切泡立たないため、歯ブラシにのせる時の適量がまだ見極められていない。

 

マウスウォッシュ

・コンクールF(ドラッグストア)

今までは習慣が無かったのだが、これからきっと洗口液もあった方が良いだろうと思い購入。ボトルを見て初めて、過去の歯列矯正時にも使用していたことを思い出した。やだ久しぶり〜、元気してた?ちなみにここ最近だと、スタバの新作が『コンクールの味がする』なんて言われているらしい。飲み物の味では無いと思うが…?

 

小道具

・デンタルミラー(Seria)

口内状況を正確に確認すべく、100均を訪ね歩いた。本当は最近の耳かきのようにライト一体型だと最高にありがたいのだが、そこまでの物は見つけられなかった。そういうのはもっと値段も高いのかも。しばらくはミラーと懐中電灯の二刀流をしつつ、角度調整を極めたいと思う。

 

保護剤

・3M Unitek Wax-Pac

最後に一番大事な仲間を紹介する。現時点でこれが最も活躍しているし、きっと器具が外れる最後までお世話になるだろう。ポケ◯ンでいうところのムクホークファイアローの立ち位置だ。

見た目はグルーガンの中身をそのまま小さくした物で、食べても害のないワックスが棒状に固められている。器具やワイヤーが口内を傷つけないよう、これを米粒大にちぎり取って器具の気になる場所に貼り付けて使う。これがあると無いとではQOLが全く違ってくる。歯磨きの時に歯ブラシが溶けたワックスでぬとぬとしてしまうところが難点だが、最近はお湯で歯ブラシについたワックスを溶かすようにしている。

 

新たな仲間たち

以上が、矯正におけるいわば『旅立ちのパーティ』である。しばらくはこの仲間たちで様子を見ていくが、他にも良い物があれば取り入れたい。無事にシナリオクリアまで辿り着くためにも(辿り着かないと困るのだが)、オススメのアイテムがあれば是非教えてほしい。

センチメンタル・抜歯

さよならだけが

人生だ。春は出会いと別れの季節。私の春(つまり矯正器具が外れるのは)まだ2年半ほど先の予定だが、別れだけは治療開始早々にやってくる。

前回の診察終了時、署名済み同意書を提出し正式に契約が成立した。そのまま矯正費の支払いを済ませて、今までの人生で最高額の領収書と共に手渡されたのは抜歯計画書だった。(執筆現在、クレジット一括で払った為まだこの時の引き落としが来ていない。怖いよ〜)

 

抜歯へバトンタッチ

この矯正歯科では抜歯をしない方向らしく、紹介元のかかりつけ歯科に抜歯計画書を渡し抜歯してくるよう指示を受けた。3週間後までに上の小臼歯を2本、さらにその1ヶ月後までに下の小臼歯を2本抜いてきてほしい。しかし、難しい場合はできる範囲から治療を進めていくので無理はしなくて良い、とのことだった。

思ったよりタイトなスケジュールに慄いていると、いつも通りお仕事スマイルの先生が

「A先生(かかりつけ歯科)は抜歯お上手ですからそちらでやってもらいましょう。こちらからお電話もしておきますね」

と一言添えた。矯正歯科と一般歯科で連携してもらえるのなら患者としては大変ありがたい。2つの歯医者の間でWin-Winな関係を築いているのか、はたまた面倒な抜歯だけ体良く外部委託しているのか、なんだか微妙な関係で面白かった。

 

後日、かかりつけの歯科に抜歯予約の電話をする。こちらは笑顔など微塵もなく常にテンションの低い(しかし職務には忠実な)先生がボソボソと答えた。

「あー、やっぱり抜くんですね…。わかりました、大人の抜歯なので様子見て1本ずつやりましょう」

実はこの先生、歯科の中でも保存科の出身。日頃から、なるべく歯を削ったり抜いたりしないような治療を掲げている。そんな先生に健康な歯の抜歯をお願いするのはこちらも心苦しいが、そもそも矯正歯科を紹介してくれたのもここなので開き直ることにした。

 

抜歯当日

先生の希望で昼12時の予約となり、当日は朝から落ち着かない気持ちで過ごしていた。ちなみに抜歯前日には、最後の晩餐とばかりにサイゼでピザやラム肉ステーキ、さらにマックで抹茶わらび餅パイを食べた。(こんな時にジャンクフードばかり食べてしまうのは、庶民の悲しいところである)

いよいよ時間になり、クリニックを訪問する。もちろん人生で抜歯なんて初めてなので既に相当に緊張していたが、ダウナーな先生が「頑張って綺麗になりましょうね」などと柄にも無く前向きなことを言うので、少し気持ちがほぐれた。そのままブスッと麻酔注射にいくのかと思いきや、吹きかけるタイプ?のようで特に痛みは感じない。ちょっと苦かった。麻酔が効いたところで先生がペンチを取り出して、そのまま歯をガシッと掴む。

ミシッ、ミシミシッ…グリグリ…ググッ…ポン!

抜けた。呆気なさに茫然としているうちに、ガーゼを噛まされる。抜けた歯をすぐさま確認しようとすると、先生が手にのせてくれた。思っていたよりも綺麗な根っこの、立派な歯だ。永久歯に生え変わってから20年弱。数えきれないほどの食事を共にした同志に、つい「ありがとう」と声をかけてしまった。

最初から頭では分かっていた事だったが、抜いた歯と直面して初めて、まだ健康な歯を抜くことに後悔を感じた。残り7本もこんなことをしなくてはならない現実や突然の別れにちょっと泣きそうになりつつも、もう決断は既に終わっているのだと自分を無理やり納得させた。

 

センチメンタル・抜歯

抜歯が終わり、痛み止めと抗生物質を3日間分処方される。1週間後に次の抜歯予約を取って帰宅した。抜いた歯は消毒後に先生が専用のケースに入れてくれたので、持ち帰って家族に「見て、私の歯チャン…」と見せて回った。見て、私の歯チャン…。

動かすということ

冬来りなば、

春遠いよ〜〜〜。傷病休暇が明け、準備していた友人の結婚式が終わり、うっすらとした春の気配とともにようやく本格的に歯列矯正の足音も聞こえてきた。同意書にボールペンで署名をし、いよいよ後戻りできないことを実感しつつクリニックを訪問。

 

奥歯の隙間作り

治療はどこから手をつけるのだろうと思っていたら、まずは上顎の奥歯に固定器具(パラタルアーチとホールディングアーチの一体型)を装着するらしい。今回からはそのための準備が始まった。数回に分けてステップを進めていく。

▫️装着の目的

 せっかく抜歯をして作ったスペースを後ろから奥歯が押してこないように、上顎の奥歯を固定するための装置。大臼歯にリングを嵌め込み、口蓋を横切る形で太めのワイヤーが通る。プラスチックの装着部を上顎の裏側に接着。

▫️装着の手順

 ・大臼歯にリングを嵌め込むための隙間を作る。1週間ごとに左右を入れ替えつつ、歯と歯の間に小さいクリップみたいな金属とゴムを挟み込む。(今回はまず左側に金属、右側にゴムを挟む)

 ・リングを作るため、奥歯を型取りする。

 ・出来上がったリングを奥歯に嵌め込み、上顎の裏にリングと繋がっている固定部を接着する。

 

ようこそ苦痛

歯科衛生士のお姉さんが、ものすごい力で左側の奥歯に金属をグイグイと押し込んでくる。無理やり歯の隙間を広げようとしているのだから、もちろん痛い。こういう類は最初の方が痛くて、後半は慣れて痛みを感じなくなるはず…と祈りながら治療が終了。親知らずで歯が押されている時の痛みに近い。

ちなみに後から分かったことだが、金属が挟まっている痛みそのものよりも、その状態で食べ物を咀嚼した時の方が痛みが歯に響く。そんなこと、知りたくなかったよ…。

 

動かすということ

何事も、既に固まっているものを動かすには痛みが伴う。(企業の組織改編だとかでよく言われそうな言葉だ)まだ矯正が始まってもいないのに、今回それを早々に身をもって実感した。逆に考えれば、痛いということは動いているということにもなる。動いてるなら、まあ仕方ないか。次回は約1週間後、金属と左右のゴムを入れ替える。

突きつけられる現実

一難去って、また一難。

ぶっちゃけありえない。1月に突然の身内の不幸、さらに2月は体調不良でほぼ1ヶ月仕事を休み、3月には半年以上かけて準備してきた友人の大事な結婚式が予定されていた。全ての予定がズレ込み、一難どころか三難くらいと常に戦う年明けとなった。

 

気合いの受診

上記の通り、2月に入ってから伝染性単核球症などという謎の病気にかかり、高熱が続いていた。そんな中、精密検査からようやく2ヶ月ぶりの診察日が到来。診療当日にいきなり予約を延期するのは印象も良くないよな…と考えると、あまりにも憂鬱。

今回の診察はおそらく先生と具体的な診療計画の話をするだけで、本格的な治療は次回以降だと思われる。クリニック入口の検温器だって作動してなかったはずだ。結局38℃超えのボンボン発熱している中(しかも豪雪の日だった)、死ぬほど厚着して矯正歯科に向かったのであった。

 

治療計画の説明

カウンセリング室に入ると、手元に治療計画書が滑り込んできた。目の前のモニタにも同じ内容のパワーポイントが映し出されており、そこには大きく書かれた診断結果が。

『骨格的問題および強度の叢生を伴う著しい歯槽性上顎前突症』

今まで『出っ歯』や『ガタガタ』としか認識していなかった歯並びだが、こうやって診断名がつくと途端に絶望的なもののように思えてきた。やっぱり『強度』で『著しい』のか…と落ち込んでいると、変わらずお仕事スマイルの先生が「必ず良くなりますよ」などと言いながら治療計画の説明をしてくれた。

 

▫️現在の症状

 ・長年の口呼吸等に伴う下顎骨の劣成長と上顎骨の前突

 ・上顎前歯の著しい前傾と下顎前歯の内傾

 ・歯の大きさと歯列弓の不調和による強度の叢生

 

▫️歯列矯正 治療計画

 ・治療期間は約2年6ヶ月、その後の保定期間が最低2年

 ・上顎両側第一小臼歯および下顎両側第二小臼歯の4本抜去

 ・歯列表側にワイヤー、上顎裏側に奥歯固定装置、エラスティックゴムの各種装着

 ・親知らずは矯正治療後に抜歯

 ・顎顔面は発育成長は終了しているため骨格の改善は不可

前回の精密検査時に歯型をとられており、石膏模型もこの日に完成していた。そのあまりの不正咬合さに、「自分は今までどうやって食事してたんだろう」と不思議にさえ思えてきた。(型取りは苦痛で、ピンク色のひんやりした高密度ニチャニチャを口内に押し付けられたまま、数分間鼻呼吸で耐えた。もし鼻詰まりだったら死んでいた)

 

突きつけられる現実

治療計画書の説明をもって、本日の診察は終了。3月の晴れの場にはまだ綺麗な口元で出席したかったことや連日の体調不良もあったので、身内の不幸を理由に結局次回以降の診察をリスケすることにした。

1ヶ月後の次回診察日に署名済み同意書を持参、かつ治療費の支払い(85万くらい。抜歯代や毎回の診療費は別途)もあるとのこと。帰宅後、治療計画書の悲惨な内容と貯金額を見つめては、紛れもない現実に肩を落とすのであった。

 

早い幕開け

善は急げ。

とは言うものの、特に金額の大きい決断に対して慎重になるのは当たり前だと思う。そういうタイミングで場の雰囲気に呑まれて決断を急いてしまうのは、私の悪いところだと自覚している。

 

矯正歯科に到着

紹介された矯正歯科は、それはそれは立派で新しく綺麗なクリニックだった。というか、最寄り駅の改札内に先生の写真入りで巨大な広告を出しており、例のかかりつけ医も「き◯た歯科みたいなことする人は他にいないだろうと思ってたけど、身近にいましたね」なんて後日ボヤていた。

クリニックの中ではものすごい人数の女性スタッフが忙しなく働いており、あれよあれよと言う間にやたらと天井の高い診察室に通された。広告で見た人(つまり先生)が早足でやってきて、私の口の中をしばらく覗き込んでそのまま別室に移動。簡単な診察計画の説明になった。

 

初回カウンセリング

カウンセリング内容は以下の通り。

 ・顎が小さく、歯が収まっていない。そのため前後に歯が動いてしまい、強度の叢生(でこぼこ)が起きている。

 ・上記の理由から、上下4本の抜歯と表側ワイヤー矯正が必須。親知らずがあるなら、仕上がり維持のためにそれもどこかで抜歯することになる。

 ・概算の金額の説明。こちらは事前にクリニックのHPに割と詳細に記載されていたものと同じ。

抜歯が必須なことは私も織り込み済だったので、上記のカウンセリング結果はほぼ想定内だった。むしろ矯正を始める前に親知らずの抜歯まで求められなかったのが意外だった。

 

いきなりの決断

初回カウンセリングの内容は以上。今日のところはここで一旦帰宅してよく考えても良いし、もしこのまま矯正を開始するつもりなら今日のうちに精密検査に進むことも可能、という話になった。

ここで急に「非常に多くの患者様にご来院いただいておりまして、本日ここで精密検査に進まない場合は2,3ヶ月先の日程でしか検査のご案内ができない状況でして…」と、こちらを焦らせるようをことを言われる。

かかりつけ医の紹介だし、まあ繁盛している様子で、人柄もキツい先生ではなさそうだし、2ヶ月後にはもうやる気なくなってるかもしれないし…ということで、その場で矯正開始を快諾。なぜか決断を迫った側の先生が「えっ、大丈夫ですか?」とお仕事スマイルのまま固まり、一瞬謎な空気感になった後、晴れて私の矯正ライフが始まった。

 

早い幕開け

その後、X線を取られたり某ソシャゲのコロンブスのように歯茎と歯を剥き出しにしてあらゆる角度から写真を撮られたりして、初回カウンセリングおよび精密検査は終了。約1ヶ月先(それでも始めるまでに1ヶ月かかる)の診察日を起点に、2,3週間おきくらいにいくつかの診察予約を取ってから帰宅した。